
ウミガメは産卵期になると、数千キロメートルを泳いで自分が生まれた海辺に戻ってきます。ふる里に到着すると、入江の奥の砂浜に穴を掘った後、ピンポン玉くらいの大きさの卵を約50~200個産みます。その後すぐに穴を砂で覆います。天敵から卵を護り、孵化に適した温度を保つためです。
母ガメの仕事はそこまで。孵化するのも、孵化して出て来た後に生き残るのも、子ガメ自身にかかっています。母ガメが去った後、2ヶ月ほどで卵からかえった子ガメたちは、みんなで協力し合いながら、暗くて堅い砂穴から脱出します。穴の一番上から近いところにいる子ガメたちは天井を突き破り、真ん中あたりでは壁を崩し、一番下の子ガメたちは上から落ちてくる砂を踏み固めます。そうして3~7日かけて兄弟が力を合わせて厚い砂を突き破ると同時に外の世界に出てくるのです。
ある学者が、試験的に卵を一つずつ別々に埋めてみたところ、子ガメが生き残った確率は27%にしか満たなかったといいます。団結してこそ生きることができるという理を、ウミガメたちは生まれつき本能的に知っているようです。だから、母ガメが子ガメたちを信じて去っていくことができるのかもしれません。