​最後の飛行​

154 照会

「墜落する。脱出する。前方に村が見える。脱出不可⋯」

1991年12月13日、光州広域市西区徳興村の上空で、飛行実習を終えて着陸しようとした二つの戦闘機が衝突しました。片方の戦闘機の操縦士はパラシュートで非常脱出しましたが、別の戦闘機の操縦士は最後まで操縦桿をつかみ、緊迫した声だけを残したまま壮烈に散華しました。

声の主人公は、パイロットの夢を目前にして最後の関門を遂行中だった23歳のイ・サンヒ大尉。衝突した戦闘機が家屋が密集している場所に急降下すると、彼は方向を変えるために脱出をあきらめました。墜落地点は民家からわずか10メートル離れたセリ畑でしたが、彼の犠牲がなかったら村に多大な被害があっただろうと住民や軍関係者は口をそろえていました。

その後、村の敬老堂の前には慰霊碑が建てられ、彼の故郷である城南市野塔洞には「サンヒ公園」が造成され、若くて勇敢な軍人の殺身成仁の精神を称えています。