ライオンの妨害もはねのけた祭りの祝福

カメルーン ドゥアラ / ジャンゲ

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電気技術者である私は、伐採用の大型機械を販売する会社に勤めています。秋の祭りを目前にして機械に問題が生じてしまい、出張に行くことになりました。予想では数日かかりそうでしたが、二日後には待ちに待った角笛祭でした。気持ちとしては出張を先送りしたかったのですが、修理が急がれる上、私でなければ処理できない状況でした。必ず問題解決して帰ってこれますようにと、神様に助けていただけるように祈って出発しました。

出張先は、カメルーンの首都ヤウンデの近隣都市、オバラでした。朝早く出発すれば夕方には家に帰れると思っていたのですが、途中で出張先が変更になったことが判明しました。行き先は、日帰りでは戻って来れそうにない、オバラからさらに入りこんだ密林地域のニガでした。

早朝5時に出発したのに、オバラに着くともう正午過ぎでした。さらにそこから密林の中に入って行かねばなりませんでした。バイク(カメルーンの公共交通手段)に乗って午後1時頃ニガに到着しましたが、作業場所までその一帯の道があまりにも険しくてバイクの運転手でさえ道に迷ってしまいました。密林をグルグル回って2時間たってみると、また出発地に後戻りしていました。気持ちはだんだん焦り始めました。紆余曲折の末、午後4時頃目的地に到着しました。急いで仕事にとりかかったのに、作業を終えたのは午後7時をはるかに過ぎていました。

辺りは漆黒のような暗闇に変わっていました。どうやって戻ればいいのか、目の前が真っ暗でした。初めての道、しかも密林なのでどこがどこなのか全く見分けがつかず、完全に閉じ込められてしまった感覚でした。神様に切実に祈っていると、ほとんど人気(ひとけ)のないその場所に、奇跡のようにバイク一台が現れたのです。まるで、映画のワンシーンのように。

しかし、映画のような話はこれからです。バイクに乗って密林を抜ける途中で、土砂降りの雨になりました。その道は、向こうから人がやって来ようものなら、なんとかよけて通らねばならないほど幅が狭くひっそりとしている上、雨のせいで視界が狭くなっているので、なかなかスピードが出せませんでした。もどかしい気持ちでいっぱいでしたが、それでもどうにかこうにか密林を抜け出せそうだ、と思ったその瞬間。運転手が急にバイクを止めました。何事かと前を見ると、なんと、わずか3~4メートル前方に、テレビでしか見たことのない密林の王ライオンがうつぶせになっているのでした。

ライオンは、どっしりと道の真ん中を占領していました。これは夢かうつつか?肝が冷え切っていく感じでした。今思えば、雨が降っていたのもありがたいことでした。なぜならバイクがゆっくり走っていたので、ライオンを前にして止まることができましたが、普段のスピードだったらそのままライオンの口に突進していたかもしれません。その時はそんなことを考える暇もなかったのですが…。ライオンと向き合った時の恐怖といったら…ああ!本当に経験してみなければ、きっと分からないはずです!後ろに向かって逃げることも、前に進むこともできない、袋小路に入りこんだ状況でした。

怖いのはもちろんですが、このままでは間に合わないのではないかと心配でした。今日中に密林を抜け出さないことには明日の祭りを守れないのですが、私の力ではライオンをやっつけることなどできません。「急いでるんだ、ちょっとそこをどいてくれるかい?」と頼むこともできないし、だからといってライオンを叩いてその口から羊を救ったダビデのような勇気など、毛頭ありませんでした。本当に怖くてただただ恐ろしくてたまりませんでした。

そうして40分間、ライオンと向き合っていました。気持ちは焦るばかりで、私にできるのは祈りをささげることだけでした。すると突然、ライオンがその場をゆっくり立ち上がりました。

「まさか、こっちに向かって来るのでは?」

髪の毛が総立ちになりました。生まれてこのかた、こんなに緊張したのは初めてでした。ところが、ライオンはゆっくりと密林の中に入って行くではありませんか!ライオンが占領していた場所を大急ぎで通りぬけ、そうっと後ろを振り返ってみると、ライオンは再び元の位置に戻ってきて、その場にまたうつ伏せになりました。まるで私が祭りを守れるように、しばらく席を外したかのようにです。

天の父と母に感謝いたしますという言葉しか、他に出てきませんでした。いくらライオンといえども、神様に従おうとする私たちの行く手を阻むことは無理なようです。今、こうしてペンを進めていること自体が夢みたいです。

その後の日程はこうでした。ニガからオバラへ、オバラから首都のヤウンデに来たときは夜中の1時でした。ヤウンデからドゥアラまで5時間ほどバスで移動し、家に到着した時は、午前6時25分でした。家を出発してから、まる25時間後でした。

家で着替えを済ませ、すぐ教会に向かいました。角笛祭の午前の礼拝を守るために教会のドアを開けた瞬間、感激はひとしおでした。シオンに両足を踏み入れたこと自体が奇跡であり、神様の愛と御恵みそのものでした。

一生に一度経験するかしないかというほどのアクシデント。自分は神様の助けなしには何もできない弱い存在であることに気づき、絶体絶命という瞬間に私たちを救ってくださる神様の愛を胸深く感じました。同時に獅子の洞窟に投げ込まれることを知りつつも神様に祈ることを止めなかったダニエル、死を目前に神様を是認し、普段より七倍も熱い炉の中でも死ななかったシャドラク、メシャク、アベド・ネゴのような聖書の登場人物たちが、どれほど偉大な信仰を持っていたかを肌で感じることができました。

2020年秋の祭りを迎え、私もやはり彼らのような固い信仰の持ち主になれるようにと切に願います。福音を伝えて霊の兄弟姉妹を救うことに、神様の御力に依り頼みながら勇ましく進んでいこうと思います。神様がいつも共にいてくださる祝福の道は、どんなものによっても妨げることは不可能だからです。