![](/wp-content/uploads/2020/02/well-done.jpg)
エレベーターに乗ると、あるお母さんがベビーカーを押して入ってきた。ベビーカーに座っている子供の髪の毛が特別、つやだっていて自然に目が行った。子供を見つめていると、手首に何か押された跡を見つけた。「よくできました」という文字が刻まれたハンコのようだった。
「おや、手首に押されたのは何だい?」
好奇心から尋ねると、子供の母親が代わりに答えた。
「保育園で先生が押してくれたハンコなんですが、おふろの時に洗って消そうとすると泣き喚いて騒ぎ、そのまわりは洗えませんでした。すると、こんな痕跡が残ってしまって。」
母親が洗ってあげる時、褒め言葉のハンコが消えるのではないかと戦々恐々とする子供の姿が思い描かれてつい笑った。「褒め言葉は鯨も躍らせる」という言葉が浮かんだ。動物もほめられれば喜ぶというのに,況して人はどれほど喜ぶだろう?
そしてふと自分を振り返った。一番身近な家族を一日に何回褒めたことか。これまで褒めることに消極的だったようで、反省するようになった。お金がかかることでもないし、そんなに難しいことでもないのに。
妻が真心を込めて作った料理を食べながらも何も言わずに食事をすることが多く、褒めると言っても「おいしいな」の一言だけだった。妻は、珍味を準備して作る日は、私が帰宅する時間にいつもよりより気を使うが、もしかしたら私がその料理を食べながら褒めてほしかったのではないかと思うと、申し訳ない気持ちになる。
夫婦間、あるいは親子の温かい愛を維持するためには、忠告と指摘よりは称賛の一言が必要だという事実を改めて悟った。これから妻をはじめ周囲の大切な人たちに褒め言葉をたくさんかけなければならないと思う。今日の夕方、食卓で妻に伝える言葉を心の中で練習してみる。
「君が作った料理が一番だよ。よくできたね!」