キレやすい社会、家庭から見直そう!

腹を立てる?我慢する?最もベストな選択は、怒りを鎮めること!

15,744 回視聴

まさに「怒りを抑えられない社会」となりつつある。高速道路で、車線変更をしたという理由で相手の車に言いがかりをつけようと怒り心頭のあるドライバーが突然、高速道路で車を止めた。後続の車は急停車し、さらに後続の車5台が追突し、何の罪もないドライバー1人が死亡、4人が重軽傷を負った。マンションの下の階から聞こえる騒音のために、下の階の住人と争ったあげく放火して2人が死亡、両親に小言を言われたことでムシャクシャし、いさかいを起こしていた同僚を腹立ちまぎれに偶発的に殺害するなど、怒りを抑えることができずに起こる事件・事故は、日増しに増え続けている。

怒りを抑えることができない症状がひどくなると、ややもすれば間欠性爆発性障害(Intermittent explosive disorder:脳の交感神経で感情が上手に調節されないために理性喪失し、頻繁に状況・誘因に見合わない罵声など言語暴力・破壊や傷害など物理的暴力を行う反復性衝動制御障害の一種。別名:憤怒調節障害 by:wiki)につながる恐れがある。2013年にアメリカ・ワシントンで13人を死亡させた銃乱射事件の犯人も、この障害を持つ男性だった。このように無分別でトゥーマッチな怒りの表出は、自分の人生だけでなく、他人の人生まで台無しにすることになる。

「誰でも怒ることがある。それはとても簡単なことだ。しかし、正しい人に、正しい程度に、正しい時に、正しい目的、正しい方法で怒ること。それはすべての人にできることではなく、簡単なことでもない」

アリストテレスが言ったように、怒りは無条件に悪いことではない。不義に対して怒りを表す場合もある。そんな怒りを「義憤」という。義憤は、大した問題ではない。問題は、日常生活での怒りという感情の多くが、義憤ではなく論争や争いを引き起こす、ただの怒りであるという事実だ。

怒る人が損をする

怒りによって最も大きな被害をこうむる人は、まさに自分自身である。いったん怒りだすとアドレナリンとコルチゾールなどストレスホルモンが分泌されるのだが、これらの物質が分泌されると血圧が上がり脈拍が速くなるなど生理的変化が起き、心臓血管の内壁に損傷をもたらす。このようなことが繰り返されれば、心臓病、高血圧、動脈硬化、消化障害のような疾病だけでなく、脳細胞損傷による認知症の確率も高くなる。また、ガン細胞を殺すNK(ナチュラル・キラー)細胞の機能を抑制し、ガンに対する抵抗力を低下させる。

イギリスで行われたある実験によると、人が怒ったときに口から吐く息を一時間集めて濃縮したところ、80人を殺すことのできる毒薬に変化したという。となると、毒素を作り出す本人の健康は、どれだけ害が大きいだろうか。「一笑一若、一怒一老」と言われるように、怒ると老化のスピードも加速する。アメリカのある教授は、自身が大学生だった当時怒りを測定するインタビューで、怒りのレベルが高かった人は50歳になった時に死亡する確率が4-7倍も高かったという。

怒ると一時的にはスッキリした感じがするが、体と心は荒廃の一途をたどる。しかし、これを自覚できないために「怒った方がマシ」と錯覚してしまうのだ。あるグループには腹が立った時にサンドバッグを叩きながら怒りを表出できる機会を与え、他のグループは数分間座って静かに怒りを鎮めるように指導した。その後観察してみると、サンドバッグを叩いたグループは、他の人にも攻撃的に接する傾向があったという研究結果がある。怒りを抑えることができず、毎回そのようなやり方でしのいでいては、本人が苦しくなるばかりだ。では「怒り」という感情をどう治めるべきだろうか?

怒りと向き合う姿勢

1.「そんなこともあるさ」

心理学者アルバート・エリスは、怒りというのは「○○すべきだ」という、当為的期待と関連していると述べた。たとえば一日中子どもの世話をしている専業主婦は、「夫が家に帰ってきたら、子どもと少しでも遊んでくれるべきだ」と考えているが、逆に夫は「一日中苦労して働いてきたんだから、家に帰ったら休むべきだ」と思っている。親は子どもが「ある程度の成績はとってくるべきだ」と考え、子どもは「やりたいことは、親がすべて叶えてくれるべきだ」と考える。このような期待を抱いていると、その期待が裏切られた瞬間に腹が立ってしまう。他人の考えが、自分の考えとピッタリ一致することはない。むしろ、そうでない時の方がもっと多いだろう。当為的期待をする代わりに「そんなこともあるさ」という寛大な心を持とう。

2.時が解決してくれる

人間関係論の大家として有名なデール・カーネギーは、ある読者から自分の本について批判する内容の手紙を受け取った。 カーネギーは怒ってすぐに返事を書いた。「どう考えても、あなたの知能が疑わしいですね。この返事も、おそらくまともに理解するのは難しいでしょう」。そして手紙を引き出しの中に投げ込んでから数日後に取り出して読み返し、また返事を書いた。 「私の著書についてご忠告くださり、ありがとうございます。もっと良い本を書けるように努力いたします」

怒りのホルモンは通常15秒で最高潮に達したあと、徐々に消えていく。腹が立ったからといってすぐに大声をあげたり相手を攻撃したりせず、深呼吸をして時間を稼ごう。心が安定してこそ、余裕を持って理性的な判断が可能になる。

3.その日の怒りは、その日のうちに終わらせよう

2005年5月、夫と妻がそれぞれ105歳と100歳のイギリス人老夫婦が結婚80周年を迎え、世界最長結婚ギネスブックに載った。記者が、幸せな結婚生活をどうやって維持することができたのか、その秘訣を尋ねると妻はこう答えた。「私たちもたびたび他の人たちと同じようによく言い争うこともありましたが、怒ったままベッドに入ったことは一度もありませんでした。だから、いつも手をギュッと握り合って、眠りについたんです」

聖書にも「怒ることがあっても、罪を犯してはいけません。日が暮れるまで怒ったままでいてはいけません」(エフェ4章26節)という御言葉がある。また、ユダヤ人の親は子どもをひどく叱っても、ベッドに入る時には優しく慰める。怒りはその日のうちに解いてしまうこと。一つの事件には一度の怒りで十分だ。腹が立った時の状況をくどくどと何度も思い返したり、「今に見てろ」というふうに長い間根に持っていると、自分自身の健康を害するうえ、状況も悪化する。

4.プラスの方向に発散させよう

作家トーマス・カーライルは、数年かけて完成させた原稿を、まず友人に見せた。ところが、友達がしばらく外出している間に、メイドがそれをゴミだと勘違いして、暖炉に投げ込んで燃やしてしまった。究極の怒りと挫折に陥った彼は、偶然、職人がレンガを積んでいる姿を見て、次のように決心した。「よし!あんな風にレンガを積むみたいに一枚ずつ、もう一度書き直そう!」その結果、最初の原稿よりずっと優れた作品を完成させ、そうして誕生した大作が「フランス革命史」である。

怒りを感じたと思ったら、むしろ運動、読書、努力、実力向上などに意識を転換させてそちらを追求してみれば、生産的な結果を得ることができる。一方、腹が立つからといって過食に走ったり、衝動買いをしたり、器物破損、暴力、暴言を吐けば、当然破壊的な結果を招くのは目に見えている。

5.「空船」になろう

ある人が櫓を漕いで川を渡っていると、向こうから流れてきた空船にぶつかった。人がいないことを知った彼は、何事もなかったかのように船を押しのけて、元のように進んで行った。ところが、また別の船とぶつかった。今度は、ぶつかった船に人が乗っていた。すると、彼は怒って相手にそこをどけと叫んだ。庄子に出てくる話だ。このように相手を「空船」だと思えば、怒りかけてもスルーすることができ、また自らが空船になって心を空にすれば、他人の過ちも受け入れることができるだろう。

6.腹が立った時はしばらく心を落ち着けて、次の内容について自問自答してみよう

  • 怒った後で、後悔しない自信があるだろうか?
  • 怒ること以外に、他の方法はないだろうか?
  • 怒ることが、自分にどんな利益をもたらすだろうか?
  • 客観的に見て、これは怒るに値することなのだろうか?
  • もしかして、筋違いな人に怒ってはいないだろうか?
  • 自分の脳細胞が傷ついてもいいのか?
  • 家族に害を及ぼさないだろうか?
  • 怒らざるを得ない方向に状況を解釈しようとしているのではないだろうか?

7.怒っている人への接し方

怒らないことも重要だが、怒っている人にどう接するかも重要だ。相手がカッとなったのに反応し、つられて怒ったり、刺激的な言葉で相手を怒らせれば、結局は喧嘩になる。とりあえず、怒っている人には何らかの理由があるので、話を聞いてあげる人が必要だ。耳を傾けて聞きながら同調し続ければ相手は怒りがおさまってきて、自分の話をじっと我慢して聞いてくれた人に感謝の気持ちさえ生じる。たとえ彼が誤解をしていたり不当に怒っていたとしても、興奮がおさまるまでは受け入れる姿勢で彼の立場を理解し、落ち着いたら自分の意見を言うようにしよう。

忍耐を教えることも家庭教育

些細なことにすぐにカッとなるのは、大人たちだけの問題ではない。授業中に寝ているのを起こした教師に腹を立てる生徒、喧嘩を止めようとした母親に暴言を吐く子どもがいるかと思うと、姉よりも小遣いを少なく貰ったのを理由に祖父を足蹴りした幼稚園児もいる。2013年2月、韓国教員団体総連合会が全国の小・中・高等学校教師594人を対象に調査した結果、教師10人中4人が、最近一学期の間に「衝動的に興奮する子どもたちのために、教職を辞めたいと思ったことがある」と答えた。

このような問題について専門家らの共通した意見は、家庭教育が重要だということだ。子供が幼児期時代にイラついたり腹を立てたりしたら、まず親がその子どもに共感し、言葉で少しずつ言い聞かせてあげることで、怒りをコントロールする方法を身につけることができるという。小さい時から、子どもの言い分を全て聞き入れてあげていては、我慢ができない子どもになってしまう。駄々をこねれば、手に入れたいものは何でも手に入ると思わせないように「ダメなものはダメ」と教えよう。また、否定的な言葉で抑圧せず、スマートフォンを使う代わりに本や新聞を読ませるようにし、1日に10分だけでも子どもと心をオープンにして話し合う時間を持つことも重要だ。

親がいつも腹を立ててばかりいると、子どもは反抗するに決まっている。親が体罰を加えれば加えるほど、青少年期のほとんどの子どもは非行に走りやすくなることが分かっている。10代の子どもには、怒鳴り声も体罰に負けず劣らず大きな傷となる。したがって、精神的に成熟した子どもに育てるためには、親がまず怒りを抑えて知恵深く心をコントロールする良い手本を見せることが必要だ。

家族のように身近な間柄であればあるほどすぐに腹を立てやすく、甚だしくは八つ当たりまでしてしまう。家族に寄せる期待が大きいだけに、その期待が裏切られた時の失望も甚大な上、何よりも「家族なんだから、これぐらいは分かってくれるだろう」という甘えがあるためだ。しかし、家族によって受けた傷はずっと深く、しかも長びく。誰よりも大切でありがたい家族なのだから、怒らない努力をしよう。今月は「怒らない家庭づくり」に挑戦してみてはいかがだろうか。