ドレスルームがどうにもこうにも片づかないので、ハンガーラックを一つ注文しました。数日後、品物が到着しました。夜間の仕事をしているので時間的にあまり余裕がなかったのですが、すぐに終わるだろうと、さっそくラックを設置して片付け始めました。しかし思うようにはいかず、半分くらい片付いたところでぐったり疲れてしまい、整理が中途半端な状態で数日が経ちました。
ある日仕事を終えて帰ってきた夫が、ドレスルームを見ながら顔をしかめました。
「なんで服の整理を途中でやめちゃったの?働いて疲れて家に帰って来たのに、散らかった部屋を見たら、ガックリ来ちゃうよ」
普段なら「私だって、時間もないし体調が優れない時だってあるじゃない。そんなことも分かってくれないの?」と切り返したかもしれませんが、不思議なことに、いつもと違う表現が口をついて出てきました。
「しようしようと思ってたんだけど、出来なかったの。ごめんなさい。気分なおして!」
夫は何も言いませんでした。以前の彼だったら、吐き捨てるようにこう言ったでしょう。
「どんなに気分が悪くても、相手がごめんと言ったんだったら、何か言うのが礼儀じゃないの?まったく、ひどいよな」
私は、夫はきっと疲れているんだと思い、それほど不愉快な気持ちにはなりませんでした。夫は私が出勤する時間まで、表情を変えませんでした。
「あなた、今日はとても疲れているみたい。仕事、きっと大変なのね。服の整理は、仕事から帰ったら私が必ずやっておくから、とりあえず気にしないで先に休んでね」
主人は、何も答えませんでした。
仕事を終えて帰ってくると、家族はみんな、すでに夢の世界に旅立っていました。すぐにでも横になりたくて仕方がありませんでしたが、夫にこれ以上迷惑をかけたくなかったので、残っていた服を全部整理しました。
ドレスルームの整理が終わった後、寝ようと寝室に入ると、ガサガサ物音がしたせいか目を覚ました夫が言いました。
「さっきは、すまなかった。疲れていたせいか、心にもないことを言っちゃって。怒っただろう?」
「ううん、早く片付けてしまえばいいものを先延ばしにして、不愉快にさせてしまった私の方が悪かったのよ。ごめんなさい!」
お互いに謝り合って、気分よく一緒に布団に入りました。
夜明けに起きた夫は、ドレスルームを見るなり言いました。
「昨日僕が言ったことのせいで君もムカッと来ただろうに、我慢してこんなにスッキリ片づけてくれたなんて…。本当に感動だよ!」
夫の口から「感動」という言葉が出た瞬間、胸がジンとしました。そして、ふと思ったのです。
「私は今まで、兄弟姉妹たちにどれだけ感動を与えていただろうか?」
御母様の教訓に「美しく見ようとする心は、憎しみがなく完全な愛を成します」という御言葉があります。天の母の御言葉どおり、兄弟姉妹たちが完全な愛を実現するためには、誰が何を言ってどんな行動をしたとしても、すべて理解し受け入れてあげなければなりません。でも私は、耳の痛い話は小言を言われているようで「何なの、いったい!いちいち、うるさいったらないわ!理解できない!」と、いつもお決まりの文句で対応することがほとんどでした。そんな完全なる愛を実践できない私に、真の愛が何なのかを知らせてくださるために、神様が一瞬、愛の目と愛の心と愛の唇をお許しくださったような気がしました。
兄弟姉妹をいつも天の母の心で理解してあげ、母の目で見つめながら、母の表現方法で慰めることができたらどんなに良いでしょう?いつも足りないことばかりの子供たちを、愛の心で面倒を見て世話してくださる天の母を思いながら、兄弟姉妹たちに母の愛を伝える娘になります。