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指先で楽しんだ贅沢

アルゼンチン ブエノスアイレス / キム・ドヨウン

95 照会

ふと、幼い頃のことを思い出しました。おそらく、10歳くらいのことだったと思います。通学路の途中に化粧品店が一軒あったのですが、お店の外にはマニキュアを山積みにしたカゴが置かれていました。

ある日、二つ下の妹と化粧品店の前を通り過ぎる時、マニキュアのかごの前で立ち止まりました。色とりどりのきれいな液の入った小さなガラス瓶がとてもかわいくて目を引きました。マニキュアを一度も塗ったことのなかった私は、友達がたまに可愛く塗った爪を自慢しているのを見ると、内心羨ましくてたまりませんでした。そのせいもあってか、無意識にカゴに入ったマニキュアを一つ、素早くポケットに入れてしまいました。

その時、店のスタッフが長いこと店の前にいる私たちを見て不審に思い、店の外に出てきました。賢い妹は、私がこっそりポケットに入れたマニキュアを、すばやく元の場所に戻しました。妹の前でもあり、ばつが悪い思いで家に帰ってきましたが、妹がそのことを母にいちいち報告したので、ひどく叱られました。

次の日、学校から帰ってくると、母は玄関で嬉しそうに私を迎えながら、両手を後ろに隠したまま言いました。

「プレゼント、買ってきたわよ!」

母が手を伸ばして見せてくれたのは、マニキュアでした。涼しげな海の色に、きらめく星のスパンコールがちりばめられたマニキュアを手に入れた私は、飛び上がって大喜びしました。

20年が経った今、あの時のことを思い出すと、母に本当に申し訳ない一方、感謝の気持ちでいっぱいです。母は店の品物を万引きした無分別な娘を叱った後、内心可哀そうになったのでしょう。マニキュアなど、なければないで済むものなのに、何となく心に引っかかってすぐに行って買ってきてくれたところを見ると、そんな気がしました。貧しい暮らしの上に子育てで忙しく、自分の手にも塗ることのないマニキュアは、そうやって私の小さな手を贅沢にきらめかせてくれました。その切ない愛に感謝して、今度会った時は母の手を温かく握ってあげたいです。