ささやかな会話、決してささやかではない!

日常の中で軽い会話をたくさん交わす家族は親密感が高いだけでなく、幸福感も大きい。

16,917 回視聴

会話には「用件のある会話」と「用件のない会話」がある。用件のある会話は、電子機器が故障してサービスセンターに電話したり、店舗のスタッフに品物がいくらなのか聞いたり、職場の上司に売上を上げる案を提示したりと、何らかの情報を得たり意思を伝える手段として、文字通り目的と必要性によって行われる。

しかし、人が必ず必要な言葉しか言わずに生きることはできない。久しぶりに遠い親戚に会った時、エレベーターの中で隣人と出くわした時、会社の休憩室で他の部署の同僚と出くわした時等々⋯。用件がないという理由で口をぎゅっと閉じていればぎこちない沈黙が流れ、そのような席が不便で避けたくなるだろう。家族でも必要なことだけを言っているうちに、同じ場所にいても特に言うことがなくて、よそよそしくなる。

そんな時、誰かが些細な一言をかけて会話を試みると、寂寞とした雰囲気は一層柔軟になる。このように特別な用件なしに軽く交わす会話を英米圏では「スモールトーク(Small Talk)」と言う。韓国語で言えば、「閑談」「談笑」「雑談」「おしゃべり」ぐらいになる。

用件のない会話を無駄な話、時間の浪費と考え、必要な言葉だけを口にして生きるなら、世の中は実に索漠とするのではないだろうか。真剣で意味のある対話ももちろん必要だが、軽くて中身のない会話も必ず必要だ。人々の会話を注意深く観察すれば、愉快な会話は主に些細な話で満たされる場合が多い。実際に軽くて些細な会話が人間関係を強固にする接着剤になる。

ささやかな会話が生み出す親密感

有能な経営者たちは本格的な会議に先立ち、軽い会話で雰囲気を和らげる。ベテランの医師も診察する前に患者に色々な質問を投げかけ、気楽な雰囲気を作り、優秀な営業社員は品物を紹介する前に簡単な会話で顧客の気分と状況を調べる。名講師も同じで、講義に入る前にくだらないユーモアやたわいのない話で雰囲気を盛り上げる。

そのように些細な会話で硬直した雰囲気を解けば、相手との心理的距離が狭くなり、互いに親密感を持つようになる。会話しようとする意志と努力を見せているように映り、相手が配慮されているという感じを受けるためである。硬くて不便な雰囲気でいきなり用件から言えば、仕事も会話も円満に進行しにくい。まず、些細な話で会話を始め相手の心を開けば、言いたいことをもっと自然に引き出すことができる。

愛してはいるが親密感が足りない家族は、このような些細な会話が足りない。家族は言わなくてもよく知っているという考えから、些細な会話を省略すれば、言うべきことはますます減り、いざ言うべきこともそのまま聞き流すことになる。そうすると親密感が薄れ、形式的な会話になってしまう。夫婦同士の会話は無味乾燥で、親が子供にする有益な話も小言に聞こえるかもしれない。

普段、たわいのない話がたくさん交わされる家族は、深みのある会話も難なく分かち合い、危機なる状況で協力し対処も上手にできる。些細な話で満たされる会話が、内容には大きな意味がないように見えるが、それ自体で意味のあることなのだ。そして、一見無駄な話のように見えても、それがある時には関係を維持するのに実質的な助けになったりもする。お互いの関心分野や相手の考えをよく知ることで、理解する幅が広くなるためである。だから、些細な会話でも決して侮れない。

たわいない会話が幸せを与える

偶然、知人に会ってお互いに安否を尋ねたり、久しぶりに友達に会っておしゃべりをして回り、気持ちの良い感じを受けたことがあるだろうか。会話の内容は忘れても楽しかった気分は後々幸せな記憶として残る。自分の感情と考え、あったことを自由に話しながら笑っている間、脳ではセロトニンとドーパミンのようなホルモンが分泌されるが、これは強力な幸福感を感じさせる。

一人世帯で男性より女性の幸福度が高い理由もこれと関連がある。専門家らは、女性がたわいない会話を通じて他人と情緒的関係を結ぶことが幸福感に大きな影響を与えると分析する。妻が電話で知人と一時間以上おしゃべりをした後、切る時に「詳しい話は会ってしよう」と言えば夫たちは当惑する。しかし、これは妻の精神健康に役立つだけでなく、実際寿命の延長にも役立つ。

幸福度の高いデンマーク人は幸せな理由が「ヒュッゲ(Hygge)」にあると話す。ヒュッゲはデンマーク語で「安らかさ、安楽、居心地が良い」などを意味する言葉だ。安らかな空間で家族や知人たちと一緒にのんびりと会話することで幸せを感じるのである。国連が発表した「世界幸福報告書」によると、基本的な生活要件が満たされた後は、人間関係の質によって幸福が大きく左右されるという。家族であれ他人であれ、良い関係は親密な会話から始まる。要点も結論もない会話であっても、これを通じて幸せなら、これは時間の無駄ではなく、非常に価値のあることだ。

あえて言わなくてもいい話だが、そんな些細な話まで交わす家族は、そうでない家族より幸せだ。互いにつながった気分になり、一体感と所属感も大きくなる。家族同士でひそひそ雑談でもする時間に何か生産的な仕事をするのが効率的だと考えられるが、家庭の雰囲気が柔軟で和気あいあいとすれば構成員の幸福度だけでなく構成員各自が引き受けた仕事にも肯定的な成果を得ることになる。

軽くて気持ちのいい会話をするには

特別な用件のない会話だからといって、頭に浮かぶままに何でも言っていいわけではない。些細な会話の利点が相手との親密感を高めることであるだけに、相手を配慮する気持ちで会話に臨まなければならない。敏感な素材や悪口、不平など愉快でない会話は避け、日常生活に基づいた天気、料理、記事、その日にあったことなど、相手が会話に気楽に参加できる主題を話題にして、本人がたくさん話すよりは、できれば相手がより多く話せるように質問した方が良い。

だからといって、取り調べのように質問を浴びせれば困ってしまうので、相手が気持ちよく話せるように誘導しなければならない。人はたいてい好きな分野について話すのが好きだ。相手が興味を持っている話題で会話の主導権を握れば、会話は自然に盛り上がる。

些細な話だからといって大雑把に聞き流すと相手はこれ以上話したくない気持ちになり、会話は中断されてしまう。重要なのは心からの傾聴と真心のこもった共感だ。相手が話す時は、耳を傾けて目を合わせ、表情、相槌などで呼応しながら軽い笑みを送ろう。相手の言葉に否定的な反応や助言、訓戒を慎み、善悪を判断しようとする姿勢も避けなければならない。「それも知らなかったの?」、「それで結論は何?」という言葉で相手の話が詰まるようにしてもいけない。問題の答えを探したり、結論を出さなくても、相手の話を聞くことに意味がある。

気持ちの良い会話の秘訣は技術や要領のように感じられるが、実は態度にある。相手に向けた関心と会話をしようとする気持ちさえあれば可能だ。儀礼的な態度を見せたり、自分の意図通りに会話を進めるという考えは捨て、相手を自分の思い通りに変えようともしないようにしよう。「この会話は親密な関係のためのもの」という気持ちで会話に臨もう。自分の関心分野でなくても、好奇心を持って新しいことを受け入れようとする開かれた姿勢、些細な話でも聞く準備ができている姿勢は、相手を尊重するというもう一つの表現だ。

外であったことを家に帰ってきて妻にぶつぶつ打ち明けたある男が、妻が亡くなると自分の話を聞いてくれる人がいないということに大きな喪失感があるとインターネットに投稿した。すると、彼のような境遇にいる人たちは、些細な会話を交わす話し相手が消えたことに対する痛みに共感し、頑張れという慰労を伝えた。

家族とたわいのない話、些細な言葉を交わすことが何の意味があるのかと思いがちだが、実は私たちの人生の大きな活力素になる。学校や職場で何があったのか、気分はどうだったのか、昼食のメニューは何だったのか、…少しだけ力を抜いて軽い会話を豊かに交わそう。家族と一緒におやつを食べながら、何でもないことにケラケラ笑っている間に、家庭に活気が湧く。それは小さな関心と家族の話を聞くために耳と心を開いておくことから始まる。