重い皮膚病を患っていたアラムの軍司令官ナアマンが、神の人エリシャを訪ねてきた。神様の御言葉にしたがってヨルダン川に体を七度浸すと、幼な子の体のように清くなったナアマンが、エリシャに贈り物を受け取ってほしいと言った。
「わたしの仕えている主は生きておられる。わたしは受け取らない」
エリシャが最後まで辞退すると、ナアマンはやむを得ず諦めた。ナアマンがエリシャのもとを発ってまもなく、エリシャの従者ゲハジがナアマンの後を追ってきた。ナアマンが戦車から飛び降り、自分に向かって追いかけて来るゲハジを迎えた。
「私の主人が私を遣わして、こう言いました。今、預言者の仲間の若者が二人、エフライムの山地から到着したのですが、彼らに銀1キカルと着替えの服2着を与えてほしいそうです」
ゲハジの嘘に、ナアマンは銀2キカルと着替えの服2着を添えて自分の従者二人に渡した。ゲハジは受け取った品物を自宅にしまいこんでからエリシャの前に立った。
「ゲハジ、お前はどこに行って来たのだ?」
「僕はどこにも行っておりません」
「あの人が戦車から降りて引き返し、お前を迎えたとき、わたしの心がそこに行っていなかったとでも言うのか。今は銀を受け、衣服、オリーブの木やぶどう畑、羊や牛、男女の奴隷を受け取る時であろうか。ナアマンの重い皮膚病がお前とお前の子孫にいつまでもまといつくことになるのに。」
エリシャの前から立ち去ったゲハジは、重い皮膚病にかかって真っ白な雪のように変わった。
ナアマンが携えてきた贈り物に心を奪われたゲハジは、巧妙な嘘をついてその物欲を満たした。もちろん、一人でこっそり行なったことだった。しかし、誰にも知られることなく抱いた心、人知れず行なった行動さえも、神様の御前には隠すことができない。神様はゲハジが罪を犯した瞬間、エリシャの霊的な感覚を敏感にされ、事の全貌をあらわにされたのであった。
私欲を抱いたゲハジの結果は凄惨だった。欲というものは必ず罪を生み、罪が大きくなれば救いの祝福から絶たれざるを得ない。心が貪欲にならないように警戒すること、それが祝福への第一歩である。