2020年3月、新型コロナウィルスによるパンデミック(感染症の世界的大流行)のため、ペルーにも都市封鎖措置が施行され、日常生活や福音活動にも制約が生じるようになりました。それでも福音の波は止まることなく広がり続け、ペルーの中のアマゾン地域にまで達しました。
そのきっかけとなったのは、ヘルマン兄弟でした。アマゾン(「地球の肺」と呼ばれるアマゾン熱帯雨林は、ブラジルだけでなくペルー、ボリビアなどにまたがるほど広い面積を誇ります)のカヤマス村で教師をしている兄j弟は、ピウラ州に住む娘に会いに行った帰り道で、コロナによる封鎖措置が始まったたため、ランバエケ州チクラヨに住む親戚の家に滞在しました。シオンの聖徒であるその親戚から御言葉を聞くや大きな関心を抱き、真理を受け入れました。兄弟はスポンジが水を吸い込むように御言葉を吸収し、「一緒に真理を勉強すべきだ」と、他の親戚たちを大勢引き連れて、一時間も歩いてシオンを訪れたこともありました。すぐに解除されるだろうと思っていた封鎖措置は長引き、チクラヨに2ヵ月間滞在しながら聖書について学んだ兄弟は、瞬く間に福音の働き手として成長し、7月中旬頃、「故郷に帰っても信仰を守る」と、固い意志を抱いて家に帰っていきました。
兄弟は故郷に帰るや否や、休まず真理を伝えました。一週間ぶりに私たちに連絡をくれたのですが、故郷はもちろん、隣接地域の住民までなんと数十人が浸礼を望んでいると伝え、私たちを驚かせました。すぐに訪問計画を立て、真理を受け入れたがっている人が最も多いサンタマリアで、8月の初めに会うことにしました。封鎖措置のため、アマゾン地域を運行するバスがないのが気がかりでしたが、私たちはまず天の父と母にお祈りしながら様子を見ることにしました。
やはり神様はすべての道を大きく開いてくださいました。ある家族が車を出して運転奉仕をすると名乗り出てくれたのに合わせて、ヘルマン兄弟も「サンタマリアよりも近いニエバに家があるので、そこで私たちを待っている」と連絡をくれたのです。ニエバまでは、車で12時間の距離でした。私たちは通行証を準備して、午前8時にチクラヨを出発しました。
アマゾンに近づいた頃、雨が降り始めました。車の後部に積んでいた荷物がすべて雨でびしょ濡れになったうえ、森の中を5時間以上走りましたが、夜9時になっても雨林地帯から脱け出せず、だんだん心配が募り始めました。もしかして道を間違えたのだろうかと思い、時々出会う通りすがりの人に聞くと「この道をそのまま行きなさい」の一辺倒でした。雨足はますます激しくなってきました。少し休んでから行った方がいいのではと思いましたが、運転していた家族は「翌朝には、約束した場所に必ず到着しないといけない」と言いながら、むしろ私たちを励ましてくれました。
幸い雨は止み、さらに1時間走っていくとニエバに着きました。ところが、安心したのもつかの間、新たな問題が発生しました。今度はヘルマン兄弟と電話が繋がらなくなったのです。ニエバの通信環境が問題でした。何度も試みた末、翌朝の6時にようやくヘルマン兄弟と連絡がつきました。兄弟の家には救いを望む20人以上の魂が、私たちを待っていました。
浸礼を施してからすぐ、御言葉の勉強が続きました。私たちが去ってしまえば、ここにいる家族同士で信仰を守らなければならないので、聖句を一つ一つ説明するのに渾身の力を注ぎました。電灯が太陽熱による灯り一つだけなので、家族は夜遅くまでロウソクを灯しながら聖書を学びました。
翌日、安息日午前の礼拝前に、新しく2人の魂が、新しい命の祝福を受けました。午前の礼拝の後、御言葉を学ぶ場にはヘルマン兄弟の娘さんも同席し、午後の礼拝の後に神様の娘として、新たに生まれ変わりました。御言葉を学べば学ぶほど、天の父と母に向けられた家族たちの信仰が育まれていくのが感じられ、深い感動を覚えました。夜の礼拝は、ヘルマン兄弟が執り行いました。兄弟も真理を受け入れてからわずか数ヵ月しか経っていない新しい家族ですが、今後ここにいる家族のお世話をしながら礼拝を導いていかなければなりませんでした。毅然とした面持ちで礼拝を執り行い、天の父と母の犠牲に対する愛と悟りを伝える兄弟は、いつしか凛とした預言者らしい風格を備えていました。
真理を受け入れる前、兄弟は真理を探し求めながらあちこちの教会に通ってみたそうです。しかし、再臨イエス様と天の母について御言葉を聞いた瞬間、この教会が真の教会だと思ったそうです。兄弟の話を聞きながら、世界中いたるところで真理を探し求めている天の家族のことが思い浮かびました。そしてすべての福音の御業は、必ず神様の御心どおりに成されていくということを改めて感じました。福音が伝わりにくそうな状況でも、神様はすでに計画なさった人類の救いを実現させておられます。兄弟を導いてくださり、アマゾン地域に福音が伝わるようになさったことが、その生きた証拠です。
宣教活動が難しいと落胆するより、命の真理を待ち望む天の家族のことを思いながら、福音により一層身を献げていきたいと思います。いかなる形であれ、これからも福音のために力を注ぐ一日一日を生きていきます。
私と家族たちの心に、大きな感動を与えてくれた兄弟からの手紙を、代わってお伝えしながらペンを置こうと思います。
「本当に、今の私の心の中には感謝しかありません。天の父と母に出会うまで、救いを願い求めながら多くの教会の門を叩きました。しかし、長い間様々な宗教に触れながらも救いへの確信を持てず、再び真理を捜し始めました。そして新型コロナによるパンデミックが起きる前、他の地域に行くべき用事ができました。今思えば、私を導こうとなさる神様の御心だったようです。
天の父と母の存在を初めて耳にした時、まるで一筋の光が私の魂に差し込んだような気がしました。『ここに真理がある』という気持ちが強く働き、御言葉を勉強する度に視野がどんどん広がっていくのを感じました。
私は確信しています。あれほど渇望していた真理の道を見つけ、今その道に立っているということを。この道は、聖霊時代の救い主であられる天の父と母が過越祭を回復され、再び開いてくださった道で、唯一過越祭を守り神様の刻印を受けた人だけが歩んでいける、正しい道です。
まだまだ学ぶべきことはたくさんありますが、父と母が私たちに命を与えてくださったこと、そして天国を相続させてくださる神様であられることを信じています。今後の私の新しい目標は、私が聞いた御言葉を他の人々に伝えて、救いの道に導くことです。今日、ニエバに許された祝福が、その歩みの始まりです。
故郷に福音を伝えることができるようお許しくださった天の父と母に、心から感謝をささげます。『あなたがたは、わたしを愛しているならば、わたしの掟を守る』(ヨハ14:15)とおっしゃったので、私はこれからも家族と一緒に掟を守り続けます。故郷に御言葉が伝わったのも奇跡ですが、まもなくシオンが建設されるという大きな奇跡が起きることも信じています。これにとどまらず、これからもずっと福音を伝えていきます。福音は地の果てまで宣べ伝えられるとおっしゃったので、原住民の住む所まで、アマゾンの他の部族にも伝えなければなりません。
天のお母様、私が悟ることができたように、彼らも真理の道を見つけることができるようにしてください。お母様はこの地で私たちと共にいてくださり、私たちの祈りを聞いてくださって、祝福を下さる方であられることも信じています。」