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世の中で一番美しい実

韓国 釜山 / チェ・ハンナ

243 照会

私が真理を受け入れて一週間後、実家の父も新しい命の祝福を受けました。一人で三兄妹を育てるために田舎で農業の仕事に明け暮れ、都市に出てからは造船所の仕事や重労働などをしながら苦労ばかりしながら生きてきた父に、貴重な贈り物が出来たような気がして胸がいっぱいでした。しかし、父は神様に完全に進み出ることはできませんでした。母がいなかったため、家事も全て父の役目でしたが、代々長男だった父は、年間通して15回もある儒教の祭祀行事を、一度たりとも欠かさず行いました。

そんな父が、いつのまにか70代半ばの白髪の老人になりました。この10年間、父の人生はまさに苦難の連続でした。急性盲腸の手術をしたり、家で転んだはずみに股関節が折れたりもしました。不幸中の幸いといえば、すべての家事を背負っていた父の体が思うように動かせなくなったため、やむを得ず家事や祭祀行事が大幅に減ったということでした。

そんな中、釜山で開かれた「『わたしたちの母』文と写真展」に父を招待しました。展示会があるという知らせに、翌日すぐに来てくれました。展示会を観覧した後、一緒にお茶を飲みながら教会の家族が、父に「真剣に信仰生活をしてみては」と勧めました。父は「私は、何でも深く考えるたちだから…」この一言の後は、それ以上口を開きませんでした。それから数日後の安息日に、驚くべき事件が起きました。父が、二時間かけて地下鉄に乗って、礼拝に来たのです。青天の霹靂ともいえる父の安息日の外出は、その時から今まで二年以上続いています。

最初は楽な服装で教会に来ていた父でしたが、ある日を境にスーツを着てシオンに現れました。手には「とびきりいいものを用意したんだ」といいながら、礼拝用のカバンを持っていました。信仰がますます深くなった父は、積極的に神様に祝福を受ける行いをし、家の中にあった偶像を一つ一つ捨てました。

秋夕(チュソク)の連休には、一緒に安息日を守っていたところ、父の行動にまたしても驚かされました。普段、礼拝になかなか来ない姉に「お前も一緒に行こう。私は後で夜の礼拝にも行くつもりだ」と言いながら姉を連れていこうとする父の姿が、私の目にはこの上なく健気(けなげ)に映り、訳もなく笑いが出てきました。慌ただしい秋夕の連休に家族と一緒に礼拝に行く時間が、とても幸せでした。

神様に感謝しながらシオンに到着して神殿に入ろうとした瞬間、先を歩いていた父が私の方を振り返ったかと思うと、急いでこう言いました。

「これ、ちょっと留めてくれ」

父のシャツのボタンを留めながら、感動の波が押し寄せてきました。なんだか涙が出そうにもなりました。

他人の目には、弱々しい老人の姿に映るかもしれませんが、私にとって父は、神様がお許しくださった世界で一番美しい実です。愛する家族と天国に帰れるように、すべての道を開いてくださった天の父と母に、心から感謝いたします。