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​失われた思い出

韓国 江陵 / ホン・スンテ

86 照会

幼い頃、テレビで放送されるマンガが大好きだった。学校が終わって家に帰ったらマンガを観るぞと思うと、いつもワクワクした。マンガが終わってしまうと、この上なく残念だった。

面白いマンガを何度も見るにはどうしたらいいだろうと考えたあげく、ビデオテープに録画する方法を突き止めた。ビデオテープを見るとラベルの横の部分に四角い穴が開いているが、その穴をセロテープでふさぐと、テープに元々あった映像は削除されつつ観たいマンガが新しく録画されていった。

家には私の幼稚園時代のお遊戯会、ボーリングガイド、洋画、両親の結婚式など様々なビデオテープがあった。私はそれらを持ってきて録画を始めた。もちろん、両親の許可を得たビデオテープにだけ録画が可能だった。録画しておいたマンガは、何度観ても飽きなかった。

マンガを録画したビデオテープの量は日増しに増えていったが、テレビで放映されるマンガを一つでも見逃さないためにはビデオテープが足りなかった。ついに、許可を得たもの以外に必要なさそうなビデオテープを自分勝手に選んでは録画し始めた。

「洋画なんて、たくさん観て内容も全部知ってるから、もういらないよね?」

「ボーリングなんて滅多にしないから、ガイドなんかなくてもよさそうだし…」

問題は、その次からだった。私のお遊戯会と両親の結婚式のビデオテープにまで手を出しはじめたのだ。結局、家にあるビデオテープのほとんどがマンガを録画したビデオテープに変わっていった。

数日後、母が「久しぶりに結婚式のビデオでも見ようかしら」とビデオテープを入れて再生したところ、マンガが録画されていたのが発覚して大騒ぎになった。母は火のように怒り、録画はもちろん、これ以上マンガも観れないようにした。それだけでは飽き足らず、マンガを録画したビデオテープを全部ゴミ箱に捨ててしまった。その後はマンガを観ることもできず、録画などは夢のまた夢となってしまった。私はひたすら母を恨んだ。

何年もたってから、その当時の私の行動がいかに無分別だったのかに気づいた。最近は以前のようにビデオテープではなく動画ファイルで結婚式の映像を残す。たまに私の結婚式の動画を見ると、両親に申し訳なくなってしまう。幼い息子がふざけていた姿、家族一緒に過ごした楽しかったひと時、両親にとって最高に美しかった瞬間を綴った記録が全て消えてしまったので、母の心はどれほどだったことか。時間さえ取り戻せたら、マンガごときに両親の大切な思い出を消し去ってしまうような過ちは決して犯さないはずなのに“後悔先に立たず”とはこのことだ。

天国ではどうだったのだろう、と考えてみる。自分勝手な判断をしてふるまい、天の家族との美しかった思い出を全て捨ててしまい、天の両親の心を痛めたのではないだろうか?それでも、自分の思い通りにさせてくれないからと、両親を恨んだのではなかっただろうか?

これ以上、霊肉ともに同じ過ちは繰り返さない。失われた思い出は取り戻せないが、生きている間、それに負けない素敵な思い出をこれから作っていくつもりだ。